「初恋」って、
いくつの時でしたか?
幼稚園や保育園時代から、
小学生時代という人が、
多いのではないでしょうか。
「初恋は実らない」
よくそう言われます。
しかし、
初恋の人と結婚できた人もいるのです。
それも、
長〜い年月を経て…
信子さん(仮名)の初恋は、
幼馴染みの男の子でした。
彼とは家が近所で、
同じ幼稚園に通っていました。
物心ついた時から、
彼を含めた近所の子どもたちと、
毎日のように遊んでいました。
そんな彼に恋心を抱いたのは、
小学校に入学し、
同じクラスになってからのこと。
勉強も運動も優秀な彼が、
とても輝いて見えました。
しかし、まだ小学生。
自分の気持ちを打ち明けることもなく、
その後も幼馴染みとして、
普通に仲良く過ごしました。
♡
信子さんは大人になってからも、
彼を想い続けていましたが、
その想いを打ち明けることは、
ありませんでした。
彼が自分に、
特別な感情を抱いていないことが、
わかっていたからです。
叶わぬ恋なら、
友情を大切にしていきたい、
そう思っていたのです。
そして彼は、
25歳の時に、
違う女性と結婚しました。
ショックではありましたが、
いつかこういう日が来るだろうと、
覚悟していました。
ですから、
他の友人たちと一緒に、
結婚式・披露宴にも出席し、
友人として二人を祝福できたのです。
♡
信子さんもお年頃、
恋のチャンスも巡ってきました。
お見合いをしたことも、
お付き合いしてみたことも、
幾度かありました。
しかし、
いずれも結婚を決意するまでには、
至りませんでした。
理由は自分でもわかりませんでした。
もしかしたら、
心のどこかで、まだ初恋の彼を、
忘れられなかったからかもしれません。
♡
時は過ぎ…
信子さんはいつの間にか、
58歳になっていました。
そして、
58歳の信子さんは、
純白のウエディングドレスを着て、
バージンロードを歩いていたのです。
信子さんを迎えたのは、
初恋の彼でした。
約50年という長い年月を経て、
初恋が実った瞬間でした。
♡
実は…
彼の奥様は、
病で他界されました。
そして前年、
7回忌の法要を済ませたのち、
信子さんに交際を申し込み、
二人は結婚することとなったのです。
♡
結婚式には、
地元の友人たちが大勢駆けつけ、
まるで同窓会のような盛り上がりでした。
信子さんは彼に対する想いを、
これまで誰にも告白したことは、
ありませんでした。
でも、
友人たちは皆わかっていました。
だからこそ、
その純愛が実を結んだその日を、
心から祝福してくれたのでしょう。
彼もそんな信子さんに、
ウエディングドレスを着せてあげたいと、
結婚式・披露宴を計画したのでした。
♡
信子さんのご両親は、
ご健在でした。
ご両親へ、
お手紙の朗読と花束贈呈が、
おこなわれました。
「お父さん、お母さん、
長い間ありがとうございました」
本当に長い間でした。
笑い声と泣き声が、
同時に押し寄せた、
究極のクライマックスシーン。
ご両親の、
涙と笑顔でくちゃくちゃになったお顔が、
とても印象的でした。
※本文中の内容は、
事実に基づくフィクションです。