結婚への想いと、愛の行方

結婚生活には、
たくさんの幸せがある一方、
たくさんの試練もあるようです。

 

そもそも人は、
なぜ結婚するのでしょうか。

 

愛する人と一緒にいたいから?
幸せになりたいから?
寂しいから?

 

それとも…

 

 

加代さん(仮名)には、
交際している大好きな彼がいました。

 

彼も加代さんのことが大好きでしたが、

たった一つだけ、問題があったのです。

 

それは、
彼が既婚者だということでした。

 

彼は旅行関係の会社を、経営していました。

 

大きな会社ではなかったため、
社長である彼も、
時にはツアーコンダクターを、
担うことがありました。

 

二人にとって、
その時がチャンスでした。

 

加代さんは臨時スタッフとして、
そのツアーに同行するのです。

 

海外ツアーともなれば、
1週間、10日と長期に及びます。

 

もちろん仕事ですから、
旅行者のお世話をしなくてはなりません。

 

しかし、その間ずっと、
二人は一緒に過ごすことができるのです。

 

それも何の心配もなく…

 

そんな二人の関係は、
彼の家族に知られることなく、
気がつけば7年にもなりました。

 

彼は今も将来的にも、
加代さんとの結婚は全く考えておらず、
加代さんもそれを重々承知していました。

 

それでも、
加代さんは彼のことが好きだったのです。

 

結婚できなくたっていい、
ずっとこの幸せが続けばいい、
そう思っていました。

 

しかし、
加代さんも気がつけば30代後半。

 

周りの友人たちも次々と結婚し、
ママになっている人もいます。

 

幸せな家庭生活の話を聞くにつれ、
加代さんの心に変化が起こりました。

 

彼の家庭生活を、
想像するようになってしまったからです。

 

これまで感じなかった寂しさが芽生え、
更には、
罪悪感をも伴うようになっていきました。

 

このままでは、
いけないのではないか?

 

   ♡

 

39歳になった年、
加代さんは結婚しました。

 

お相手はもちろん彼…

 

ではありませんでした。

 

結婚相手(新郎)は、
仲の良い友人の一人である、
高校時代のクラスメイトだったのです。

 

加代さんの好みとは、全く正反対のタイプ。

 

ですから新郎に対しては、
「大好き」とか「愛している」とか、
そのような感情はありませんでした。

 

ただ真面目で優しいことから、
「この人とだったら、
 平凡でも穏やかな家庭を
 築いていけるかもしれない」
そう思っての結婚でした。

 

「愛」と「結婚」は違う、
そんな風に理解したのでしょう。

 

   ♡

 

結婚披露宴は、
出席者300名超の盛大なものでした。

 

お二人はとても幸せそうに見えました。

 

本当に素敵な披露宴でしたが、
ただ一つ、気になることがありました。

 

それは、
元彼を招待していたことでした。

 

自分の幸せな(幸せそうな)姿を、
元彼に見せたかったからなのか…

 

自分自身の気持ちに、
きちんとけじめをつけたかったからなのか…

 

新しい生活に向けての、
何か強い決意があったからなのか…

 

   ♡

 

結婚式から1年が経ったころ、

残念な噂が耳に届きました。

 

加代さんご夫妻が、
「結婚生活にピリオドを打った」と…。

 

新生活は思っていた以上に幸せな毎日で、

やはりこの人と結婚して良かったと、

加代さんは心から思っていたようでした。

 

しかし結婚式から3ヶ月後が経った頃、
元彼から海外ツアーの誘いが来たのです。

 

加代さんはその誘いを、

断ることができませんでした。

 

当然のようにそれがきっかけとなり、
元彼との交際が復活してしまったのです。

 

回を重ねても、

夫は加代さんを疑うことはなく、
純粋に仕事の旅行だと信じていました。

 

ですから加代さんは、
夫との結婚生活を続けながら、
元彼とも交際していけると思いました。

 

しかし、
元彼と過ごす時間が幸せであればあるほど、
別の人と一つ屋根の下で暮らすことに、

苦しさを感じるようになっていったのです。

 

結局、加代さんは、
結婚1周年を迎える前に、
夫の元を去ることとなったのだそうです。

 

   ♡

 

結婚する瞬間の相手に対する想いや、

結婚や結婚生活に対する考え方は、
人によって様々だと思います。

 

そして、
どんなに愛し合って結婚したとしても、
いつの日か、
心が変わってしまうこともあるかもしれません。

 

別々の道を歩む決心をする夫婦は、

3組に1組と言われています。

 

でも、結果はどうであれ、
一度は一生添い遂げようと心に誓ったはず。

 

たとえ愛は消えてしまっても、
思いやりの心は持ち続けて欲しい…

そう私は思います。

 

もちろん、
末永いお幸せな結婚生活を、
心から願っていることは言うまでもありません。

 

※本文中の内容は、
 事実に基づくフィクションです。
 また個人的な意見であることを、
 ご理解ご了承ください。