友人から聞いた噂話。
「火のないところに煙は立たぬ」なのか、
「根も葉もない噂」なのか…
もしあなたなら、
その真相を確かめてみますか?
「靖夫クンって、
梨花のこと好きみたいだよ」
梨花さん(仮名)がそう言われたのは、
大学3年生の時でした。
靖夫さん(仮名)というのは、
同じ大学の友人で、
入学当時から仲良くしている友人の一人。
もう2年以上の付き合いになりますが、
そんな様子は全く感じられません。
そして梨花さんも、靖夫さんに対して、
友達を超えた感情はありませんでした。
「そんなことあるわけないじゃん、
誰がそんなこと言ったの?」
「本人がそう話しているらしいよ」
らしい…か…。
まあきっと無責任な噂話だろう、
梨花さんはそう思いました。
♡
しかしながら、
そう言われると、何となく気にはなるもの。
靖夫さんの言動に対して、
以前より敏感になってしまいました。
そして、そんな目で見るからか、
その言葉は私に気があるからかも…?
その行動は私のことが好きだからかも…?
そんな風に思えてくるから不思議です。
♡
では、靖夫さんの本心は、
どうだったのでしょうか?
梨花さんのことは、
友人としか思っていませんでした。
梨花さんが「やっぱり私のこと好きなのかも?」
と感じたのは、気のせいだったことになります。
そして靖夫さんもまた、
「梨花はお前のこと好きらしいぞ!」
という話を友人から聞いていました。
つまり靖夫さんは、
梨花さんが自分のことを好きだと、
思っていたわけです。
♡
お互いに、
「相手が自分を好きなのだ」と認識し、
「自分は相手を友達としか思っていない」
という状態ですから、
どちらも何も行動を起こすことなく、
当然、何の進展もありませんでした。
しかし今度は、
相手が何の行動も起こさないことに、
お互いが疑問を持ち始めたのです。
「何で好きなら、
二人だけのデートに誘うとか、
してこないんだろう?」
「何で好きなら好きと、
言って来ないんだろう?」と。
そう考えると、
何だかイライラしてしまうのです。
でも、
もし告白されたらされたで、
自分はどう対応するのだろう。
断るのか?
友達としか思えないと言えるのか?
それとも、
とりあえず付き合ってみるのか?
うーん、
だったら、告白されない方が、
今のままずっと友達でいられるから、
その方が良いのかも。
ああそうか、
だから相手もそう考えて、
特に何も言って来ないのか?
自問自答を繰り返す毎日でした。
後から振り返れば、この辺りから、
お互いに相手を好きになり始めていたと、
言えるのかもしれません。
この状態はその後も続き、
気がつけばもう4年生になっていました。
♡
そして迎えた夏休み、
やっとチャンスが訪れました。
友人たちと夏祭りに出かけた日のこと、
もうそろそろ帰ろうかという時に、
二人はみんなとはぐれてしまったのです。
携帯電話は繋がりません。
このあとはメンバーの部屋で、
飲み明かす予定になっていました。
人混みの中みんなを探すのは困難だと考え、
直接友人の部屋に向かうことにしました。
♡
道すがら、
「相手の想いを聞いてみようか…」
二人ともそんな気持ちになっていました。
「梨花って、俺のこと好きなのか?」
言葉にしたのは靖夫さんの方でした。
「何言ってるの?
靖夫クンが私のこと好きなんだよね?」
「エーーーーーーーーッ!?」
♡
友人の家に着くと、
部屋に明かりが点いていません。
自分たちの方が早かったのかな?
そう思ってドアノブを回すと、
鍵はかかっていません。
声をかけながら部屋に入って行くと、
突然クラッカーが鳴り響き、
デコレーションケーキに、
キャンドルの火が灯りました。
🎵happy birthday to you
happy birthday to you
happy birthday dear 梨花
happy birthday to you🎵
そう、
その日は梨花さんのお誕生日でした。
「ねえ、どっちかから、
ちゃんと告白できたんでしょう?」
梨花さんと靖夫さんの手に、
ケーキナイフが渡されました。
「はい、二人で将来の予行演習。
ケーキ入刀〜!」
♡
あの日から5年、
靖夫さん・梨花さんの手により、
本物のウエディングケーキに、
ナイフが入れられました。
そして、
新郎新婦の生い立ちビデオでは、
あの日のお誕生日ケーキ入刀シーンも、
しっかりと映し出されました。
♡
友人たちの勘違いと、
優しいお節介から始まった、
新郎新婦の恋愛ストーリー。
もしかしたら、
あなたの気付かないところでも、
何かが始まっているかもしれません。
乞うご期待…。
※本文中の内容は、
事実に基づくフィクションです。