大人の常識として、
言っていいことと悪いことがあります。
それが結婚披露宴の席であれば、
なおさらのこと。
でも、
空気が読めない人って、
どこにでも出没するものです。
【身体的なこと…】
「今日は新郎が、
何だかとても大きくて立派に見えます。
幸せだと身長まで伸びるものなのですね」
幸せで身長は伸びません!
背が低いことを隠したいからこそ、
シークレットブーツを履いているわけです。
*
「今日は髪型がいつもと全然違い、
髪の毛がフサフサしていて、
最初は誰だかわかりませんでした」
髪型は変えられますが、
自然とフサフサになるはずありません!
薄毛の悩み、人によってはとても深刻です。
カツラを着用しているという事実から、
新郎が気にしているのは明らかです。
せめて新婦側の出席者には、
隠しておきたいと思ったのでしょう。
新郎側の友人たちが大爆笑したことも、
大人気ない行為でした。
*
「新婦は結婚式のために、
ダイエットに励んでいました。
昼食も、飲み会の誘いも全て断り、
必死に頑張っていました。
その甲斐あって、
以前とは、まるで別人のようです。
素敵なウエディングドレス姿を披露できて、
本当に良かったですね」
以前の新婦と比べれば、
かなりウエイトダウンしたのでしょう。
でも、
初めて会う人は、以前を知りません。
新婦は、ぽっちゃり体型でした。
一体以前はどれほど太っていたのかと、
多くの出席者に、
いらぬ想像をさせてしまったことでしょう。
♡
【過去のこと…】
「新郎はご覧の通りカッコよく、
学生時代からとてもモテていました。
社会人になっても、いつも周りに女性がいて、
友人たちからとても羨ましがられていました」
いつも女性が…?
ただ単にモテていただけかもしれませんが、
微妙なニュアンスです。
新婦やご両親の不安を煽ってしまったのでは?
*
「これからは新婦だけを大切にしてください」
今までは、どうだったのか…?
*
「前回の結婚で、
新婦はとても辛い目にあっていました。
私の家に泊まり、
朝まで泣いていたこともあります。
それでも新婦は一生懸命頑張ってきたのです。
そんな頑張り屋さんで優しい新婦だからこそ、
新郎という素敵な男性に出逢い、
再婚することができたのだと思います。
親友として、とっても嬉しいです。
◯◯ちゃん本当に良かったね。おめでとう」
前夫との辛かった結婚生活なんて…。
いえその前に、
新郎側の出席者はこの瞬間まで、
新婦が「再婚」だと知らなかったのですが…。
♡
悪気は全く無いのだと思います。
むしろ、
おめでたいということ、
幸せになって欲しいということ、
それらを強調して伝えたかったのでしょう。
でも、
実際に強調されてしまったのは、
マイナスの部分や、
隠したい部分でした。
言葉の使い方や表現方法は、
とても難しいものです。
その一言がなかったら、
素晴らしいスピーチだったかもしれません。
その一言が大問題に発展する可能性も、
無いとは言えないでしょう。
一度口から出てしまった言葉は、
聞いた人の記憶から消すことはできません。
もし自分が相手の立場だったら、
どう感じるのか?
スピーチだけに限らず、
常日頃から相手の気持ちを考えた、
思いやりある言動を心がけたいものです。
自戒の念を込めて…。
※本文中の内容は、
事実に基づくフィクションです。
また、コンプレックスは人それぞれであり、
それを否定するものでは決してありません。
誤解なきようお願いいたします。