披露宴の謝辞に込められた想い

結婚式・披露宴を一番喜んでいるのは、
やはりご両親ではないでしょうか。

 

ご両家代表謝辞には、
溢れるほどの想いや、
お父様のお人柄が感じられます。

 

 

【緊張して…】

 

お父様も人間。

 

緊張だってするのです。

 

原稿を作り、前の晩までに暗記したものの、
やはり不安は拭えません。

 

披露宴中にも、ずっとメモを握りしめ、
暇さえあればモゴモゴ練習している人も。

 

披露宴、ちゃんと楽しめているのかな?
ご子息の晴れ姿、しっかり見ているのかな?
心配になってしまいます。

 

でもそれも、ご子息を思ってのこと。

 

息子に恥をかかせてはいけない…
出席者に失礼のないように…

 

そんな重圧と戦いながら、
息子の親として精一杯のことをしなくては、
そんな意気込みが伺えます。

 

でもそのような真面目な方に限って、
いざ謝辞の場面になると、
頭が真っ白になってしまうのです。

 

司会「ご新郎のお父様◯◯様より、
   御礼のご挨拶をお願いいたします」

父 「只今ご紹介いただきました、
   新郎のお父様の◯◯です」

 

会場から笑いが起こるものの、
ご本人は気づきません。

 

お母様が横でお父様を突きます。

 

それでも覚えてきた挨拶を全うしようと、
必死になっているので気付きません。

 

そして途中で言葉に詰まると、
次の言葉が全く出てこなくなってしまいます。

 

父「すみません。
  もう一度最初からやり直します」

 

最初からやり直さないと、
思い出せないのです。

 

それでもまた途中で詰まってしまいます。

 

また最初からやり直しです。

 

さすがに3度目になると、
見るに見かねて、ささやき女将登場です。

 

いえ、
お母様の助け舟が出ます。

 

お父様の練習を、
家で何度も聞かされていたお母様は、
挨拶文をすっかり暗記しています。

 

お母様の言葉に続き、
お父様がそれを復唱します。

 

そこでその先を、

お父様が思い出してくれれば良いのですが、
ずっとお母様に頼ることになってしまう
そんな場合もあります。

 

お母様の声が小さいと、
お父様が「えっ?」と聞き返し、
お母様の声が大きいと、
マイクがその声をしっかり拾ってしまいます。

 

当然お客様にはバレバレです。

 

父「いや、もう緊張しちゃって、
  何だかすみません。
  いや、大変申し訳ありません。
  とにかく皆様、
  本日は誠にありがとうございました」

 

   ♡

 

【息子の晴れ姿に感激して…】

 

親子の付き合いは、
大人になるにつれ薄らいで行くもの。

 

特に子どもが故郷を離れている場合には、
もう何年も会っていないという親子も、
珍しくありません。

 

久しぶりに会う我が子。

 

一緒に暮らしていた頃と比べ、
眩しいほど立派になっています。

 

親として、

こんなに嬉しいことはありません。

 

感極まって男泣きされるお父様も。

 

「皆様から息子のことを伺い、
 お世辞とは承知しながらも、
 もう嬉しくて嬉しくて…」

 

「大学時代に上京してから、

 ほとんど会っていませんが、
 親ができなかった教育を、
 皆様がしてくださったのだとわかり、
 本当にありがたくて…」

 

「昨日まで鼻水を垂らしていたような子が、

 嫁さんを貰うほど立派になったなんて…」

 

「親バカだと笑われるでしょうが、
 今日は心から息子を褒めてやりたい…」

 

   ♡

 

【花嫁の手紙に感動して…】

 

謝辞の直前に行われるのが、
新婦のお手紙朗読と、ご両親への花束贈呈。

 

感動し、泣いてしまうのは、
花嫁のご両親だけではありません。

 

新郎のご両親だって人の親。

 

新婦の気持ちも、
新婦ご両親の想いも、理解できるもの。

 

そして、
我が子の思い出も重なリます。

 

感情を抑えようと、
一生懸命原稿を読むお父様…

でも涙で原稿の文字が読めません。

 

あるいは、
せっかく暗記したはずの挨拶文が、
すっかり吹っ飛んでしまいます。

 

「私にも娘がいるので…

 娘の結婚式を思い出してしまって…」

 

「こんなに素晴らしい娘さんを、

 息子がいただいてしまって、

 本当に良いのでしょうか?」

 

「お嬢さんを必ず幸せにします!」

(→新郎じゃなく父親なのに…)

 

   ♡

 

あらかじめ作り込んできた文章よりも、
その時の感情がそのまま現れた言葉に、
多くの人が共感・感動するものです。

 

たとえ言葉に詰まったとしても、

たとえ立派な言葉ではなかったとしても、

想いが伝わるご挨拶って素敵だなあ…

そう思わずにはいられません。