出逢ったのは異国の地

運命の人は、
あなたのすぐ近くにいるかもしれません。

 

でも、
近くにいたからって、
近くで出逢えるとは限りません。

 

1万キロ以上も移動しなければ、
出逢うことができなかったかもしれない、
そんな運命もあったりするのです。

 

 

裕美さん(仮名)は23歳。
小さい頃からお花が大好きで、
フラワーコーディネーターの専門学校を経て、
お花関係のお仕事に携わっていました。

 

大好きなお花に囲まれた仕事は、
とても楽しく幸せなものでした。

 

しかし、仕事に慣れるにつれ、
もっと深く学びたいと、
思うようになっていきました。

 

そのために、
新たな資格を取得しようと考えたのです。

 

仕事は一旦やめることを決意しました。

 

仕事を辞めてから学校に通うまで、
少し日にちがありました。

 

長年の夢を叶えるチャンスでした。

 

裕美さんが抱いていた夢とは、
オランダで毎年開催されている、

フラワーパレードを、
見に行くことだったのです。

 

裕美さんは意を決して、
一人オランダに渡りました。

 

   ♡

 

せっかく海外に行くのだから…

 

裕美さんは、オランダ以外の場所でも、
観光を楽しみたいと思いました。

 

そして選んだところはイタリアのナポリ。

 

オランダからナポリまでは、
実に1800キロ。

 

日本で言ったら、
函館から福岡までの距離に匹敵します。

 

ミラノでもローマでもフィレンツェでもなく、
なぜナポリを選んだのか?

 

理由は特にありませんでした。

 

ただ何となく、
まるで何かに引き寄せられるように…

 

   ♡

 

宿泊先はホテルではなく、
ユースホステルでした。

 

ユースホステルは安価というだけでなく、
世界各国から旅人たちが集まり、
交流の場、情報交換の場ともなるため、
人気が高い施設でもあります。

 

また、その地域ならではの、
体験プログラムなども用意され、
一人旅の人にとっては、
過ごしやすく安心して楽しめる、
ありがたい施設とも言えるでしょう。

 

   ♡

 

裕美さんはそこに3日間滞在しました。

 

日本語以外の言葉は、
ほとんど話せない裕美さんでも、
各国の旅行者たちと友達になれました。

 

でもやはり日本人というのは、
同じ日本人に安心感を覚えるもの。

 

言葉の通じない海外であれば尚のことです。

 

   ♡

 

裕美さんはそこで、
一人の日本人男性と出逢いました。

 

彼は30歳になったのを機に、
念願のヨーロッパ一人旅を実行したのです。

 

彼にとっては初めての海外旅行でした。

 

そして何と偶然にも、
裕美さんと同じ群馬県人だったのです。

 

話が盛り上がらないわけはありません。

 

3日間はあっという間に過ぎてしまいました。

 

そして裕美さんは帰国、
彼は次の目的地へと旅立ちました。

 

   ♡

 

普通なら旅の良き思い出の一つで、
終わったかもしれません。

 

でも、二人は同じ県内に住む者同士。

 

せっかく知り合ったのだからと、
帰国してからも度々会うようになりました。

 

最初は友達として。

 

そしていつしか恋人同士に…。

 

   ♡

 

裕美さんと彼は、
ナポリのユースホステルで出逢ってから、
ちょうど2周年の記念日に、
結婚式を挙げました。

 

   ♡

 

住まいが近くでありながら、
全く接点のなかった二人が、
まさか異国の地で出逢うなんて、
誰が想像できたでしょう。

 

二人が旅行先にナポリを選んだのも、
そこに確たる目的があったわけでは、
ありませんでした。

 

この旅に出た本当の理由は、
念願のヨーロッパ旅行実現でも、
憧れのフラワーパレード参加でもなく、
二人が出逢うために、
必要不可欠だったからかもしれません。

 

どこにどんな出逢いがあるかわからない。

 

だからこそ、
人生って楽しいのかもしれません。

 

 

※本文中の内容は、
  事実に基づくフィクションです。
  尚、この記事は、

  一人旅を薦めるものでも、
  旅先での出逢いを薦めるものでも、
  決してありません。
  危険に遭遇する可能性も考えられますので、
  くれぐれも 慎重な行動をお願いいたします。