結婚・出産より大切なもの?

「この人と結婚する気なんて,
 なかったんです!」

 

「結婚式や披露宴だって、
 本当はやりたくないんです!」

 

いったい新婦に、
何があったというのでしょうか?

 

 

結子(仮名)さんは、
CMでもお馴染みの有名企業に勤める、
バリバリのキャリアウーマン。

 

もうすぐ40歳になる彼女は、
その実績から、
部長にまで昇進していました。

 

「仕事ができれば、
 男も結婚もいらない!」

 

そう豪語するほど、
仕事に生きがいを感じていたのです。

 

しかし、
そんな結子さんにも彼ができました。

 

何を言っても、
笑って聞き役に徹する彼は、
結子さんにとって、
仕事のストレスを解消してくれる、
心地よい相手だったのかもしれません。

 

それでも仕事第一。

 

結婚までは、
考えたこともありませんでした。

 

ですが…

 

できてしまったのです。

 

そう、子どもが…。

 

   ♡

 

披露宴での新郎新婦の紹介は、
ほとんどの場合、司会者が行います。

 

新郎新婦それぞれの経歴、
二人の出逢いなどを、
打合せでお尋ねすることになります。

 

あらかじめ担当者がお渡した
プロフィール用紙を拝見すると、
新郎の部分と、
二人の馴れ初め部分が、
ぎっしりと丁寧に書かれていました。

 

新婦への愛情、
結婚式・披露宴を迎える喜び、
新郎のお人柄が滲み出ていました。

 

一方、新婦側の欄は、
真っ白でした。

 

お名前すら書かれていません。

 

「経歴?

 テキトーに紹介してください」

 

「結婚の決め手?

 子どもができちゃったからです。」

 

「彼のこと?
 特別好きなわけじゃありません」

 

何を聞いても、
投げやりな言葉ばかり。

 

隣でニコニコ笑っている
新郎の心中はいかばかりかと、
とても心配になりました。

 

結局ご紹介できるような話は、
何も聞くことができませんでした。

 

はっきりいって、とても困りました。

 

テキトーな紹介など、
するわけにはいきません。

 

先ほどの結子さんの言葉を、
そのまま使うことなど勿論できません。

 

覚悟を決めました。

 

クレームの覚悟です。

 

勤務先に幾度もお電話しました。

 

当時は携帯電話も、勿論メールも、
まだ一般的ではありませんでしたので、
連絡方法は、
会社か自宅の固定電話のみです。

 

毎日帰りが遅いとのことなので、
ご家族と一緒にお住いのご自宅に、
深夜お電話するわけにもいきません。

 

会社へのお電話しか方法はありません。

 

勤務時間内の電話。

 

嫌がられました。

 

煩がられました。

 

怒られました。

 

当然と言えば当然です。

 

それでも、
やめることはできません。

 

本番まで1週間。

 

戦いでした。

 

   ♡

 

結局、雑談の中から話を拾い、
経歴や人柄については、
お母様と新郎からもお話を伺い、
なんとか紹介文を完成させたのです。

 

そして、

結婚式の日を迎えました。

 

   ♡

 

披露宴がお開きになると、
結子さんはこんな言葉をかけてくれました。

 

「披露宴のはじめにあの紹介を聞いて、
 心がほぐれていくような気がしました。

 

 今まで育ててくれた両親、
 こんな私を選んでくれた彼、
 私を支えてくれた上司や友人たち…。

 

 たくさんの思い出とともに、
 感謝の気持ちが湧き上がってきました。

 

 仕事と、結婚・出産…

 

 天秤にかけては
 イライラしていた自分が
 とても恥ずかしいです。

 

 披露宴、やってよかったです。

 

 一生忘れません。

 

 ひどいことばかり言って、
 たくさん嫌な思いをさせて、
 本当にごめんなさい…」と。

 

   ♡

 

数ヶ月後、
写真付きのポストカードが届きました。

 

そこには生まれたての可愛い赤ちゃんと、
二人の幸せ溢れる笑顔がありました。

 

どうやら結子さんは、

仕事以上に大切なものもあると、
気づくことができたようです。

 

   ♡

 

自分の思っていた計画に、
反することが突然訪れた時、
本当はそれが幸せなことであっても、
邪魔されたという気持ちに、
なってしまうものなのかもしれません。

 

仕事・結婚準備・体の変調、
それはそれは大変だったことと
推察できます。

 

マリッジブルーになるお気持ち、
よくわかります。

 

でも、
出産を決め、
結婚式・披露宴もおこなうと、
決意したのであれば、
一生に一度の大切な日を、
最高のものにしようと思って欲しいのです。

 

あの時、
ああしておけば良かった、
こうしておけば良かった、
そう思っても取り返しはつきません。

 

この新郎はとても優しく、
心の広い方だったため、
新婦を温かく包み、
何を言われても笑って受け止めて
くれていました。

 

でも、
もし彼じゃなかったとしたら…

 

   ♡

 

ほんの一時の感情だけで、
自分にとって一番大切なもの、
自分にとって一番大切な人を、
絶対に失わないで欲しい…。

 

マリッジブルーを乗り越えたら、
きっとそこには、
今の何倍も何十倍もの幸せが、
待っているはず。

 

あなたも、
世界で一番幸せな花嫁になって欲しい…
そう心から願っています。

 

 

※本文中の内容は、
  事実に基づくフィクションです。