ここ数年、いつでもどこでも、
スマホを見ている人が多くなりました。
危険であることはもとより、
周りで起こっている出来事などを、
見過ごしている可能性もあります。
あなたは大切なこと、
見逃してはいませんか?
雄一さんも、
スマホの画面を見て過ごすことが、
とても多い人でした。
歩きながらも、
電車を待つ時も、
電車に乗っている時も、
気がつけばスマホを見ていたのです。
ところが、
その日の会社帰りは違いました。
ここ数日、仕事がとても忙しく、
かなり疲れが溜まっていたため、
スマホの画面を見る元気もありませんでした。
珍しくスマホはカバンに入れたまま、
ぼんやりと周りの景色を眺めながら、
駅に向かって歩いていました。
そして、そのまま駅の改札口を抜け、
ホームへ向かおうとしたその時、
足元に何かが落ちていることに
気づきました。
定期入れでした。
改札口が近かったため、
雄一さんはすぐに駅員さんに届けました。
ちょっとだけいいことをしたかも…
そんな清々しい気持ちになったのも、
久しぶりのことでした。
♡
それから数日後…
会社帰りに、
またいつものようにスマホを見ながら、
駅のホームで電車を待っていると、
電話の着信がありました。
知らない番号からでした。
ちょうど自分の乗る電車が、
ホームに入ってきたところでしたが、
仕事関係の人からかもしれないと思い、
その電話に出てみました。
すると…
「あの…
定期を拾っていただいた者ですが…」
女性の声が聞こえてきました。
ああそういえば…
仕事に追われ、
そんなことはすっかり忘れていました。
「お礼に、ぜひお食事でも…」
彼女はそう言いました。
しかし、
別に大したことをしたわけではないし、
お礼などのお気遣いはいらないと、
雄一さんはきっぱりお断りしました。
ところが、
彼女の会社もこの駅のすぐ近くで、
ちょうど帰るところだというのです。
「もしよかったら、
これからお会いできませんか?」と。
その日は特に何も予定がなかったため、
「では、お礼とは関係なく、
一緒に食事に行きましょうか」と、
その日に会うことを了承しました。
♡
結局その日は、
ご馳走になってしまった雄一さん。
「では、次は僕に奢らせてください!」
それはごく自然の成り行きでした。
お互いの会社も近かったことから、
以降お二人は会社帰りに、
度々食事に行くようになり、
自然とお付き合いが始まったのです。
そして2年の交際を経て、
結婚の日を迎えることとなりました。
♡
あまりにでき過ぎた話で、
そんなこと実際にあるはずない、
そう思うような出逢いでした。
あの日、もし雄一さんが、
いつものようにスマホの画面を見ていたら、
落ちていた定期入れに気づくことも、
このお二人が結婚することも、
きっとなかったことでしょう。
スマホの画面から、
ちょっと目を離してみたら、
あなたも足元に、
幸せに繋がる何かを、
発見できるかもしれません。
※本文中の内容は、
事実に基づくフィクションです。