結婚披露宴のスピーチを頼まれ、
何をどう話せば良いか悩んだ経験、
ありませんか?
そんな時、
本やネットでスピーチ例などを調べ、
そのまま使っちゃうことも、
あるかもしれません。
でも、
当たり障りのないスピーチをしたつもりが、
実は誰かの心を傷つけてしまうことも、
無いとは言えないのです。
例えばこんなことも…
雅恵さん(仮名)は、
大学時代に出逢った彼と、
およそ8年の恋愛期間を経て、
結婚式の日を迎えました。
その雅恵さんが、
司会進行の打ち合わせで、
初めにおっしゃった言葉は、
「出産や子どもに関する話は、
いっさいしないでください」
というものでした。
♡
雅恵さんには、
あるご病気の経験がありました。
そしてそれによって、
出産が望めないお身体に、
なってしまったのだそうです。
彼はそのことを知っていましたが、
彼のご両親には話していませんでした。
彼は長男であるため、
ご両親はきっと後継を期待しているはず。
ですから雅恵さんは、
彼のことは大好きだけど、
結婚は諦めようとさえ思っていました。
彼は、
「俺は雅恵と結婚したい。
子どもを産んでくれる人と、
結婚したいわけではない」
そう言ってくれました。
しかしご両親のお気持ちを考えると、
なかなか踏み切れません。
結婚まで8年かかってしまったのも、
そのためでした。
「世の中には様々な理由で、
子どもを産めない人も、
産まない人もたくさんいる。
結婚したらからといって、
必ず子どもを産まなきゃいけない、
そういう決まりがある訳じゃない。
親にとって孫が生まれることよりも、
自分たちの子が幸せになることが、
一番嬉しいんじゃないのかな。」
彼のそんな言葉に、
ようやく結婚を決意した雅恵さんでした。
♡
そのような経緯から、
出産や子どもの話には、
絶対に触れないで欲しいというのが、
雅恵さんの願いでした。
祝電に関しても、
「お子様の誕生を楽しみにしています」
といった出産を期待するような文章は、
全て削除して欲しいとのことでした。
♡
しかしスピーチまでは、
どうすることもできません。
やはり…
「子どもを産んで初めて一人前です。
早く親御さんを安心させてください」
「美男美女のお二人ですから、
きっと可愛い赤ちゃんが
生まれるに違いありません」
「ご両親に孫を抱かせてあげることが、
一番の親孝行です」
「お祖母様もひ孫の誕生を、
心待ちにしていることでしょう」
♡
披露宴のスピーチで、
子どもの話は定番中の定番です。
スピーチをする方々に、
悪気がないのはわかっています。
出席者は事情をご存知ないので、
仕方ないことでもあります。
でも、雅恵さんはそれによって、
これまでの人生で最も幸せなはずの、
結婚式・披露宴の日にもかかわらず、
とても辛い気持ちや罪悪感に、
包まれることになってしまいました。
♡
実はこのような方、
決して少なくないのです。
その理由は様々で、
お身体の事情、
お仕事の事情、
経済的な事情、
環境や思考によるもの…なども。
又このケースは、
新婦がそういう事情でしたが、
出席者の中にも同様の悩みを、
抱えている人がいるかもしれません。
せっかくのお祝いの気持ちが、
誰かを傷つけてしまうなんて、
とても残念でなりません。
スピーチ文例は、
スピーチが苦手な人や、
スピーチに慣れていない人には、
とてもありがたい救世主です。
しかし、
あくまで文例です。
そのまま使うことが、
必ずしも良いとは言えません。
そこに、
ほんの少しの思いやりを加えること、
それがとても大切ではないかと、
私は思います。
※本文中の内容は、
事実に基づくフィクションです。
尚、スピーチ文例の本などを、
否定するものでは決してありません。
上手く活用していただきたい、
そう願っています。
誤解なきようお願いいたします。