結婚式・披露宴に、
感動はつきもの。
まだ式が始まる前、
新郎新婦を見た瞬間から、
泣き始める人も多く見かけます。
親しい人が幸せな日を迎えるのは、
それほど嬉しいものです。
しかし、
こんな風になってしまうと、
色々大変かもしれません。
小百合さん(仮名)は、
28歳OL。
高卒なので、
入社からおよそ10年。
上司からも期待され、
同僚からも頼りにされ、
後輩からも慕われて…
気がつけば、
会社になくてはならない存在に、
なっていました。
仕事も会社も大好きで、
結婚をしてからも、
勤務は続けていく予定でした。
しかし、
急に新郎の転勤が決まったのです。
悩んだ末、
小百合さんは会社を辞め、
新郎についていくことを決意しました。
♡
退社から1ヶ月後、
結婚式・披露宴がおこなわれました。
小百合さんの上司も同僚も、
大勢出席してくれました。
新婦側の主賓は、
直属の上司である部長でした。
そして、
主賓の祝辞が始まったのです。
♡
お祝いの言葉を述べたあと、
思い出を振り返るように、
語り始めました。
入社時の面接官として、
初めて小百合さんに会った時のこと…
当時高校生だった小百合さんは、
可愛いながらも、
芯のしっかりとした女の子だったこと…
小百合さんの採用を決めたのは、
自分だったこと…
入社してからも、
ずっと見守っていたこと…
仕事に対して一生懸命頑張っている、
小百合さんの姿…
愛情あふれる言葉に、
新婦や会社の同僚のみならず、
新郎側のお客様も感動し、
目頭を押さえている人もいました。
5分が過ぎ、
読んでいた原稿を閉じ、
そろそろ祝辞も結びに…
誰もがそう思い、
部長ご本人も、
そういう予定だったと思います。
しかし…
ご自身の話しに、
感情が高ぶってしまったのか、
祝辞は締めに入るどころか、
逆にヒートアップしてしまったのです。
つまり、
原稿にはなかったことを、
話し始めたようでした。
いかに小百合さんが素晴らしいか、
詳細に語り出したのです。
涙声でした。
そして…
これからも、
ずっとそばで働いてくれると思った…
おめでたいことだから、
喜んであげなきゃいけないけど、
会社を辞めてしまったのは悔しい…
新郎に小百合さんを、
奪われたような気持ちでいる…
その時にはもう、
涙声をはるかに超え、
嗚咽になっていました。
感動に包まれていた会場も、
次第にスーっと温度が下がるような、
そんな雰囲気になりました。
「なんかやばくない?」
「何かあったのか?」
「普通じゃないよね?」
そんな囁き声も聞こえてきます。
泣きながら聞いていた、
小百合さんの同僚や後輩も、
なんだか冷めたような表情に、
なってしまいました。
♡
きっと部長は小百合さんを、
「部下として」可愛がっていただけ、
だと思います。
小百合さんは、
本当に優秀な社員であり、
良き部下だったのでしょう。
だからこそ、
結婚は喜ばしいことだけど、
会社は辞めて欲しくなかった。
その結果、
まるで恋人を取られたかのような、
恨み節になってしまったのでしょう。
娘を嫁に出す父親の気持ちと、
同じような想いだったのかも、
しれません。
初めの5分間だけで話を結んでいたら、
とても素晴らしい祝辞、
部下思いの良き上司…と、
高評価だったことでしょう。
残念ですし、
気の毒でなりません。
♡
感情をコントロールするのは、
とても難しいものです。
でも、
結婚式・披露宴の席で、
特に男性があまり泣き過ぎると、
良からぬ想像をされかねません。
本人のみならず、
新婦にも、
疑いをかけられるなど、
迷惑をかけてしまう可能性もあります。
感激屋の人、
すぐ大泣きしてしまう人、
感受性が豊か過ぎる人は、
くれぐれもお気をつけください。
自分への戒めも込めて…
※本文中の内容は、
事実に基づくフィクションです。