救われた花嫁のブーケ

結婚式に贈られる、
手作りのプレゼント。

 

手間とお金をかけ、
心を込めて作成してくれる、
それはとてもありがたいもの。

 

しかしその裏で、
会場スタッフが苦労していることも、
あったりするのです。

 

例えばこんなことが…

 

 

ある新婦は、
高校時代のご友人から、
「ブーケを作ってあげたい」
そう申し出があったそうです。

 

そんな特技があるとは、
知りませんでしたが、
せっかくのお気持ちなので、
作って貰うことにしました。

 

新婦と友人宅の距離は1時間ほど。

 

「受け取りに行くので、
 できたら連絡してね」

 

そう言うと、

 

「生花だから、
 作るの結婚式前日だよ。

 

 前日の夜取りに来るのって、
 大変でしょ?

 

 当日、必ず持っていくから、
 心配しないでね」と。

 

事前にその作品を、
見ることができないのは、
ちょっぴり心配だけど、
信じてお任せすることにしました。

 

   ♡

 

当日、
挙式前の早い時間に、
友人はブーケを持ってきてくれました。

 

真っ白な花とグリーンで作られた、
とても素敵なキャスケードブーケでした。

 

想像以上の出来栄えに、
お願いして良かったと、
新婦は心から嬉しく思いました。

 

   ♡

 

挙式が済み、
披露宴の開始時刻が過ぎました。

 

まだ、新郎新婦のお支度が、
整っていないようです。

 

一応状況を確認するため、
様子を見に行きました。

 

すると…

 

ご入場口から少し離れたところに、
新郎新婦の姿を確認できました。

 

ではもう間もなくだろう…と、
会場に戻ろうとしましたが、
ブーケを持つ新婦の手元で、
介添えさんが何やらごそごそしています。

 

近くまで行き、
どうしたのかと尋ねると…

 

ブーケのお花が、
ポロポロと、
取れているではありませんか。

 

もう開宴時刻は過ぎています。

 

作り直す時間など、
もちろんありません。

 

しかしまさか、
花をポロポロ落としながら歩くわけにも、
ブーケなしというわけにもいきません。

 

テープやワイヤーの予備はないため、
可能なところは、
テープを剥がして巻き直し、
針と糸を使って固定していきます。

 

新婦はその作業の様子を、
心配そうにじっと見つめています。

 

「ごめんなさい。
 もう、これ以上は無理です」

 

介添えさんの言葉を合図に、
新郎新婦、ご入場となりました。

 

   ♡

 

幸運にも、
この時の介添えさんは、
フラワーアレンジメントの、
資格をお持ちでした。

 

だからこそできた、
素晴らしい応急処置でした。

 

もし、
何の知識も技術もない、
介添えさんだったとしたら、
どうなっていたことでしょう。

 

せっかくご友人が贈ってくれた、
心のこもった手作りブーケを、
お色直しの瞬間まで、
ちゃんと使うことができたのも、
この介添えさんのお陰でした。

 

   ♡

 

フラワーアレンジメント、
着付け、
お裁縫など、
自主的に学ばれている介添えさんも、
多くいらっしゃいます。

 

結婚式に携わるからには…と、
万が一に備えているのです。

 

そのような心構えが、
万が一の場合のみならず、
普段のきめ細やかな心配りにも、
繋がっていると言えるでしょう。

 

そしてプロフェッショナルに、
支えられているからこそ、
新郎新婦も、
一生に一度の大切な日を、
安心して過ごすことができるのだと、
改めて感じさせられました。

 

   ♡

 

蛇足にはなりますが…

 

生花のブーケは、
重さに耐えきれなくなってしまう、
可能性があるそうです。

 

キャスケードブーケのように、
高度な技術が必要なブーケは、
特に注意が必要とのこと。

 

プロでない方が手作りされる際には、
くれぐれもお気を付けくださいませ。