キャンドルサービスの際に、
とても心配になるのが、
新郎新婦の衣装。
なぜかといえば、
ゲストも盛り上がっているだけに、
新郎新婦の衣装までは、
気が回らないからです。
はしゃぎ過ぎているお席では、
飲み物をこぼさないか?
お皿をひっくり返さないか?
ヒヤヒヤすることも少なくありません。
そしてとうとう、
こんなことが、
起こってしまったのです。
あるご披露宴で、
新郎のご友人たちが、
過剰に盛り上がっていました。
子どもみたいに、
会場内を走り回っている人もいました。
落ち着きがない、
というのでしょうか、
とにかくじっとしていないのです。
お酒もかなり入っているようです。
こういう人が一番危ない。
何をするか、
行動が全く読めないからです。
♡
キャンドルサービスの時には、
益々その動きに拍車がかかりました。
新郎新婦の動きに合わせ、
各テーブルで茶茶を入れる。
テーブルごとの写真撮影にも、
ちゃっかり入ってしまう。
新婦もだんだんと、
ムッとした表情を見せるように、
なっていきました。
そしていよいよ、
自分たちのテーブルへの点火。
ご友人たちの騒ぎっぷりは、
最高潮に達しました。
しかしながら、
何とか無事に、
点火と写真撮影を済ませ、
新郎新婦は次の席へ。
と、その時、
大変なことが起こってしまったのです。
♡
写真撮影の際、
新婦の隣にいた男性。
撮影が終わったため椅子の位置を直し、
勢いよくその椅子に腰を下ろしました。
新婦が歩き始めたのと、
ぴったり同じタイミングでした。
新婦がよろめきました。
ドレスが、
強い力で引っ張られたのです。
引っ張ったのは…
椅子でした。
椅子の足が、
新婦のドレスの上に、
乗っかっていたのです。
まさかドレスの上に椅子を置かれ、
その上に座られたとは知らない新婦。
反射的に、
更に強く引っ張ってしまいました。
ドレスは、
柔らかなレース素材。
強い力がかかれば、
どうなってしまうかは、
言うまでもありません。
「ひどーいっ!」
新婦は、
悲鳴とも言えるような声をあげました。
♡
介添えさんも、
ドレスさばきには、
十分気を配っていますが、
このタイミングの一致には、
どうすることもできませんでした。
そして、
その男性はといえば、
もう友人との話に夢中になっていて、
ドレスを踏んでいることには、
全く気付いていません。
介添えさんが声をかけても、
全く聞こえていない様子。
キャプテンが椅子を持ち上げ、
やっとドレスは椅子の足から、
解放されました。
男性は一瞬、
キョトンとした表情を見せましたが、
またすぐに何事も無かったかのように、
友人たちとの会話に戻っていきました。
もちろん新婦の叫びも、
その男性の耳には、
届いていませんでした。
♡
高砂席に座った新婦の後ろでは、
介添えさんが、
針仕事をおこなっていました。
花束贈呈シーンまでには、
何とか目立たないようにしてあげたい。
大きく破けてしまった部分を、
時間と戦いながら、
必死の思いで縫い合わせてくれました。
♡
何日もかけて選んだ、
お気に入りの素敵なドレスも、
そのままの美しい形で、
ゲストにお披露目できていたのは、
わずか10分程度。
そして、よりにもよって
おめでたい結婚披露宴で、
ドレスが破れるなんて…
新婦の悔しさは、
容易に想像できます。
新郎が話していなければ、
その男性は、
今でもその事実を、
知らないかもしれません。
♡
新郎新婦は、
お客様に喜んでいただけることを、
一番に考えているでしょう。
しかしながら出席者の方も、
新郎新婦のことを一番に考えて欲しい。
羽目をはずす機会は、
普段いくらでもあるはず。
ただの飲み会ではなく、
新郎新婦にとっては、
一生に一度の、
結婚披露宴だということを、
どうか忘れないでいただきたい、
そう心から願っています。
※本文中の内容は、
事実に基づくフィクションです。