「人生って不公平だーっ!」
そんな風に心の中で叫んだりしたこと、
あなたにはありませんか?
一生懸命頑張っているのに…
こんなに実績を上げているのに…
何でこうなるんだ?
おかしい、絶対おかしい!
仕事上の悩みは尽きないものです。
でも、
会社を辞めようとまで思った人が、
ちゃっかり、
幸せを手に入れちゃったのです。
あなたがこんな状況になったら、
どうするのでしょうか?
悟さん(仮名)は、入社10年目。
大学を卒業してから、
ずっと同じ会社で頑張ってきました。
自分では、
結構イイ線いってるな…
と、思っていました。
人事異動の季節を、
彼は楽しみに待っていたのです。
そう、
次は必ず、
昇進できると確信していましたから。
そしてついにその時がやってきました。
直属の上司から呼び出しがあったのです。
期待に胸を膨らませ、
満面の笑みで会議室に向かいました。
ところが…
上司の口から出たのは、
「昇進」の言葉ではなく、
「転勤」の辞令でした。
本社勤務の彼が、
とある地方の営業所に異動となったのです。
肩書きは所長でした。
栄転では?
いいえ、彼の言葉を借りると、
それは明らかに「左遷」だというのです。
泣きました。
悔しい気持ちを抑えることができず、
しばらく会社のトイレから、
出ることができませんでした。
会社を辞めることを考えました。
その夜、
ふと大学時代の友人を思い出しました。
確かあいつ、
実家があの辺りだと言ってたよな。
久しぶりに電話をかけてみました。
友人は東京の企業に就職しましたが、
父親の会社を継ぐため、
今は実家にいるとのこと。
「こっちに来たら、
真っ先に、会いに来いよ!」
向こうに友達がいる。
それがどんなに心強かったか。
悟さんは、
安易に辞める道を選ばず、
そこで頑張ってみようと、
決心することができました。
引越しが済んだ夜、
悟さんは友人と一緒に、
郷土料理のお店にいました。
地元の良さを知ってもらえれば…
そんな想いで誘ってくれたのです。
美味しいお料理に、
お酒もどんどん進みます。
「やけ酒」
そんな言葉がぴったりでした。
友達に会えた懐かしさと、
左遷されたという悔しさ。
笑ってるんだか泣いてるんだか、
自分でもわからないほど酔っていました。
「じゃあ、もうそろそろ…」
と帰り支度を始めた時、
ふと視線を感じて隣の席を見ると、
女性と目が合いました。
「かわいい…」
普通は、
それで終わりです。
でも、
悟さんは、かなり酔っていました。
気が大きくなっていたんです。
「あのー」
「今日、東京からこっちに来ました。
お騒がせしてすみませんでした。」
「明後日から、ここにいます。
良かったら、連絡してください!」
できたてほやほやの、新しい名刺。
記念すべき1枚目を、その女性に渡し、
そのまま店を後にしました。
果たして…
「1週間前、
郷土料理のお店で、
名刺をいただいた者です」
そんなメールが届いたのです。
あの女性でした。
まさかと驚きました。
全く期待なんてしていませんでした。
あんなに酔っ払っていたし、
名刺を渡されたからって、
連絡なんてくるはずないと…。
それを機に、
時々メールで話をするように、
なりました。
それから1ヶ月が過ぎ、
こちらでの仕事にも生活にも、
馴染んで来た頃、
あの郷土料理の店で、彼女と再会し、
おつきあいが始まったのです。
そして2年後、
二人は結婚しました。
♡
彼女は当時を振り返り、
こう話してくれました。
隣の席でしたし、
話の内容は、聞くつもりはなくとも、
全部聞こえていました。
酔っ払って、クダを巻いていたけど、
仕事に対する一生懸命さを、
ものすごく感じたのです。
こちらで頑張ってくれるといいなぁ、
そんな風に思っていました。
そして、
あの時、ナンパじゃなかった。
ちゃんと、会社の名刺をくれた。
それで、
誠実な人なんだろうなあって、
思えたんです。
私は彼に、
連絡先も名前も教えていないので、
私から連絡しなければ、
一生会うこともなかったと思います。
だからと言って、
付き合いたいとか、そういう想いではなく、
ただなんとなく、
気になって連絡しちゃったんです。
♡
大学時代の友人を思い出したこと、
その友人が故郷に帰っていたこと、
あの店に連れていってもらったこと、
理性を失うほど酔ったこと、
名刺を渡したこと、
彼女がメールをくれたこと、
そのどれか一つだけがなくても、
きっと二人は結ばれなかったでしょう。
そして「左遷」というのは、
悟さんの勘違いでした。
1年後に、
昇進して再び本社勤務となりました。
つまり、転勤は昇進のための、
修行のようなものだったのです。
でも、私には、
人生のパートナーと出逢うための、
転勤だったとしか思えません。
♡
ご縁なんて、
どこに潜んでいるか、
わからないものです。
もしかしたら、
あなたが今おかれている状況にも、
何かが潜んでいるかも知れません。
※本文中の内容は、
事実に基づくフィクションです。