プロカメラマンの神業!

仲の良い友人たちが、
結婚をお祝いしてくれるのは、
とても嬉しいものです。

 

そして、
一生に一度の大切な日を、
盛り上げようとしてくれるその気持ちも、
本当にありがたいもの。

 

でも、

中には、いるんです。

 

「盛り上げる」という意味を、

ちょっとばかり、
取り違えている人たちが…。

 

あるご披露宴、

お料理は中華でした。

 

テーブルはターンテーブル付き、
つまり円卓の上に、
もう一枚、回転する丸い板が
取り付けられているものでした。

 

当然ご存知のことと思いますが、

この回転する板は、
お料理を取りやすくするためのもので、
決して、遊ぶ道具ではありません。

 

もしあなただったら、

このような盛り上げ方、
どのように受けとめますか?

ご披露宴の中盤、

いよいよキャンドルサービスです。

 

思い出の曲に乗せて扉が開き、

真っ白なタキシードと、

純白のウエディングドレスで、

新郎新婦がご入場されました。

 

そして、

一礼から顔を上げ、

会場を見渡した新郎新婦

 

二人の目に飛び込んできたのは、

異様な光景でした。

何かが違う。

何かがおかしい。

 

テーブル一つ一つに当てられた照明。

そこには、キャンドルと装花が、

美しく浮かび上がっている…はずでした。

 

キャンドルは、確かにありました。

 

しかし、

お花の代わりに見えたものは…

 

なんと男性の裸体でした。

 

テーブルの中央に乗り、

あぐらをかき、

ネクタイで頭にハチマキをし、
そのネクタイには、

キャンドルが固定されています。

 

パンツ(下着)だけは、

身につけてくれていたことが、

せめてもの救いです。

 

それが一つのテーブルだけではなく、

5卓。

全体の半数にも及んでいます。

 

つまり新婦友人たちの席にまで、

進出しているのです。

 

そしてご丁寧にも、

仲間と思われる男性が、

そのテーブルを、

回転させているのです。

 

新郎新婦は大爆笑!

 

…するとでも、

思ったのでしょうか?

 

新婦側の友人も喜ぶ、

…と、考えたのでしょうか?

 

お酒が入ると脱いでしまう男性、

よく見かけます。

 

親しい仲間たちだけの飲み会だったら、

盛り上がるのかもしれませんが、

結婚披露宴の席ではいかがなものか。

 

新郎新婦、

特に新婦の立場なら、

絶対に許せない!

と、思うのも当然のことでしょう。

 

各テーブルへの点火が済むと、

いよいよ、

メインキャンドル点火が、

おこなわれます。

 

高砂席の横に、

素敵なメインキャンドルが、

用意されています。

 

するとその周りに、

テーブル中央でクルクルと回転していた、

裸の男性たちが集まってきたのです。

 

ん?

人数が増えている?

総勢10名?

 

カメラに向かって、

様々なポーズをとる男性陣。

 

いくらアナウンスを入れても、

やめるどころか、

新郎新婦の間に割り込んでみたり、

トーチに手をかけたりと、

その行動はエスカレートする一方。

 

会場の最高責任者である、

キャプテン(ボーイ長)も、

新郎新婦から、必死で、

男性たちを遠ざけようとするものの、

逆に邪魔者扱いされている始末。

 

「どけーーーーーーーーっ!」

 

と、怒鳴りたい衝動を抑え、

司会者としては、

その場から退いていただきたい旨、

優しく丁寧に、

アナウンスを繰り返すことしか、

できませんでした。

 

   ♡

 

披露宴の中で、

特に素敵な写真が欲しい、

と思うシーンは2箇所。

 

ウエディングケーキ入刀時と、

メインキャンドル点火時です。

 

なぜなら、

他の人が入らない、

新郎新婦二人だけのショットであり、

結婚の報告や年賀状など、

ポストカードに使用するにも、

最適だからです。

 

その大切なシーンに、

裸の男性たちが、

写り込んでいたとしたら…

 

   ♡

 

心配で心配で、

披露宴お開き後、

すぐにカメラマンに確認しました。

 

二人だけのショット…

 

ちゃんと撮ってくれていました。

 

いつ?

どうやって??

 

まさしく神業!

 

プロカメラマンさんが、

キラキラと輝いて見えました。

 

お客様のお見送りを済ませた新婦が、

駆け寄ってきました。

 

「メインキャンドルの写真、

 どうなっていますか?

 

 友人たちが撮ってくれた写真を見たら、

 それはもう酷くて…」

 

と、悔しさと怒りを滲ませ、

今にも泣き出しそうなお顔で、

そうおっしゃいました。

 

「大丈夫ですよ。

 とっても素敵に撮れています。」

 

信じられない…

 

といった様子で、

モニターを覗き込んだ新婦。

 

「プロカメラマンに

 撮影をお願いしていて良かった。

 もう、どうしようかと思いました。

 

 本当に、

 本当に、

 ありがとうございました」

 

新婦の目から、涙がこぼれ落ちました。

 

   ♡

 

後日、

この日の新郎新婦から、

ポストカードが届きました。

 

使われていたのは、

メインキャンドル点火のお写真でした。

 

もちろん、

お二人だけのショットです。

 

新郎新婦の幸せな表情も、

ちゃんと捉えてくれていたのです。

 

本当に素晴らしいお写真でした。

 

   ♡

 

スマホやデジカメの精度が上がり、

誰にでもそれなりに、

素敵な写真が撮れる時代になりました。

 

しかし、

あの状況で、

ポストカードに使用できる写真を撮れたか?

といったら、

100%無理でしょう。

 

やっぱりプロカメラマンは凄い!

プロフェッショナルとは、

こういうものなのだと、

当たり前のことながら、

改めて強く感じた瞬間でした。

 

   ♡

 

写真はこの通り無事でしたが、

ご友人たちの行動、

あなたは、どのように感じましたか?

 

盛り上げたいというその気持ち、

何かしてあげたいという想い、

それはとても尊いものです。

 

でも、

「盛り上げる」と

「悪ふざけ」は、

似ているようで大きく異なります。

 

それも良い思い出だったと、

笑って振り返ることのできる日が、

やがて訪れるかもしれません。

 

その一方、

悔しさや、恨む気持ちが、

ずっと残ってしまう可能性だって、

あり得るのです。

 

仲が良かった友人たちとの、

今後の人間関係に、

悪影響が出てしまうことも、

無いとは言えないでしょう。

 

せっかくのお祝いの気持ちが、

逆効果になってしまったら、

こんなに残念なことはありません。

 

お一人お一人の、

お祝いの気持ち、

優しさ、

思いやりが、

どうか美しい形のまま、まっすぐ、

新郎新婦に届けられますように。

 

※本文中のエピソードは、

   事実に基づいたフィクションです。