新婦の心を救ったものとは?

結婚式の前に、

新生活をスタートさせる新郎新婦も、
多くみられます。

 

一緒に暮らしてみないとわからないこと、
一緒に暮らしてみたからこそわかることが、
たくさんあるでしょう。

 

夢にまで見た、愛する人との暮らし。

 

一体そこには、
どのような生活が、
待ち受けているのでしょうか?

里紗さん(仮名)と彼とは、
大学時代からのお付き合いです。

 

卒業後は、

二人とも東京の会社に就職しましたが、
半年ほど前、
彼が青森支社に異動となったのです。

 

交際5年。

 

結婚を決意するには、
ちょうど良いタイミングでした。

 

両家ご両親の了承を得て、
青森県で一緒に暮らし始めたのは、
結婚式から数えて3ヶ月前のことです。

 

大学時代は、
サークルも同じ、
アルバイト先も同じ、
何をするのもいつも一緒でした。

 

社会人になってからは、
勤務先は違うものの、
会社帰りに食事をしたり、
休日にどこかへ出かけたり、
会えない時にはメールや電話で語り合い…と、
それはとても楽しい毎日でした。

 

ただ、二人とも実家住まいだったために、
夜遅くまでのデートや、
泊まりがけでの旅行など、
自由にできる環境ではありませんでした。

 

だからこそ、
一緒に暮らせることになった時、
本当に嬉しかったのです。

 

しかし…

現実は無情でした。

 

朝は、新聞を読みながら、
トーストをコーヒーで流し込むように食べ、
ほとんど会話もないまま出勤。

 

夜遅く会社から帰ると
テレビを見ながら夕食をとり、
お風呂に入ってそのまま爆睡。

 

休みの日ぐらいは、
デートに誘ってくれるかと思いきや、
「休日は体を休めるための日だ!」

とか言って、家でゴロゴロ。

 

いつか誰かが、

テレビでこう言っていました。
「一人でいるより、
 二人でいる時の方が孤独を感じる…」と。

 

その言葉の意味が、
なんとなくわかったような気がしました。

 

彼と結婚して、
本当に大丈夫なのだろうか?

 

そもそも私は、
彼のことを本当に愛しているのだろうか?

 

複雑な想いのまま、結婚式の準備を進め、
とうとう当日を迎えました。

 

結婚式の会場は、東京でした。

 

元勤務先の上司や同僚、学生時代の友人も、
たくさん出席してくれました。

 

懐かしい顔、
懐かしい思い出。

東京に帰りたい、
あの頃に戻りたい。

 

幸せの絶頂であるはずの日に、
こんな気持ちになるなんて…。

 

挙式が済み、披露宴が始まっても、
心のモヤモヤは晴れません。
笑顔を作りながらも、
心から幸せな気持ちにはなれないのです。

 

そんな時でした。

 

隣に座っている新郎のところに、
マイクが用意されました。

 

すると新郎が、

手紙を読み始めたのです。

新婦に内緒の、

サプライズ演出でした。

 

「里紗が、
 あんなに好きだった仕事をきっぱりと辞め、
 お父さんお母さんの元から700㎞もある、
 青森という全く知らない土地に、
 ためらうことなく『一緒に行く!』
 と言ってくれた時には本当に嬉しかった。

 

 この人を、必ず幸せにしなければ、
 バチが当たると思った。

 

 でも実際には、
 慣れない土地、
 慣れない職場での仕事が精一杯で、
 里紗には、
 とても寂しい想いをさせていると思います。

 

 それでも里紗は、

 不満を表に出すこともなく、
 一生懸命に食事を作ったり、
 心も体もくつろげるようにと、
 細やかな心配りをしてくれました。

 

 今日の結婚式や披露宴の準備だって、
 なるべく僕に負担がかからぬよう、
 できる限り一人で頑張ってくれました。

 

 一緒に暮らし始めて3ヶ月、

 僕には里紗しかいないと改めて確信できました。

 

 まだしばらくは、
 寂しい想いをさせてしまうかもしれないけど、
 里紗が幸せだと思える時間や、
 楽しいと思える時間が少しでも増えるよう、
 精一杯頑張っていきます。

 

 里紗、本当にありがとう…。

 

 そしてこれからもずっと…
 よろしくお願いします!」

 

里紗さんの目からは、
涙が溢れて止まりませんでした。

 

それは、
心の迷いも悩みも全て浄化してくれる、
幸せの涙でした。

 

   ♡

 

生活環境の大きな変化は、
マリッジブルーを引き起こす原因の、
一つと言われています。

 

大好きな仕事を辞めたこと、
見知らぬ土地に引っ越したこと、
慣れない家事をこなさなくてはならないこと…
戸惑いや不安、寂しさが沸くのも、
当然といえば当然です。

 

そんな時に唯一の支えとなるのは、
もちろん、最愛の人です。

 

でも、
心の中で思っているだけでは、
伝わらないことがあります。
わかっていても、
言葉に出して欲しいことだってあります。

 

日頃は照れくさくて言えなかったのでしょう。
彼は里紗さんに、
「お手紙の朗読」という形で、
ちゃんと想いを伝えてくれました。

 

そして、それがあったからこそ、
里紗さんの心は救われたのです。

 

永遠に続く結婚生活。
幾度も試練が訪れることでしょう。

 

そんな時、

たった一言でもいい。
愛する人への想いを、
ちゃんと言葉で伝えて欲しい…

そう思います。

 

※本文中のエピソードは、

   事実に基づくフィクションです。